乳歯期からの咬合誘導で理想的な噛み合わせをめざす
生涯にわたって健康な歯を保つために大切な要素の一つが、噛み合わせと言われている。不正咬合によって虫歯や歯周病、歯牙破折などのリスクが高まるほか、出っ歯や受け口、噛み合わないオープンバイトなどは審美性も損なわれるため思い切り笑顔を作ることが苦手になる人も。それらを防ぐためには幼少期からの咬合誘導で理想の歯列と噛み合わせをめざしていく必要がある。不正咬合の相談が増加しているという「おかむら歯科クリニック」でも、噛み合わせを重視した診療を展開。「幼少期から歯科医師が関わることで、将来の健康のために口腔内の環境を整えていきましょう」
歯並びや噛み合わせの治療は乳歯の時期から。
放っておくと永久歯列に大きな影響を及ぼすことも
お子さんの歯並びを気にする親御さんが増加傾向
”以前と比べて、子どもの噛む力は弱くなってきている”
受け口や前歯が噛み合っていないなど、相談に来られるケースは増えています。学校歯科医を10年以上続けていますが、以前と比べて歯列矯正に取り組んでいる児童の割合も高くなっていますね。その背景には当然、保護者世代のデンタルIQが上がっていることもありますが、食生活など生活環境の変化も大きく影響しています。例えば現代は味の濃い食べ物、やわらかい食べ物が多く、子どもたちの食べ物を噛む回数や噛む力は以前に比べて格段に落ちていると指摘されています。ゆえに顎が未発達になり、歯が生えるスペースがないため歯列が崩れ、結果的に噛み合わせが悪くなってしまうのです。
咬合誘導とはどのようなもの?
”一人ひとりの口腔環境は違うので一人ひとりの状態に合わせた治療を行う”
ひと言で「咬合誘導」と言っても、お子さん一人ひとりの口腔環境は違うのでケースバイケースの対応が必要です。まずは口腔内の写真など資料を採り、保護者の方と一緒に状況を把握した上で、治療方法や改善例、あるいは放っておいた場合のリスクについて、これまでの実例を交えて説明します。実際にはマウスピース状の器具を入れて舌の位置の改善を促したり、口腔筋機能療法(MFT)で口周りの筋力を鍛えたり、あるいは顎を拡大させていくために床矯正装置を入れたり、お子さんの歯列の状況によってさまざまな方法を組み合わせて進めていきます。加えて食事の仕方、指しゃぶりや口呼吸など歯列に影響する癖を改善させていくための指導も行います。
乳歯の段階から噛み合わせを整えていくことが重要
”乳歯の状態は永久歯にも影響を与える”
永久歯は乳歯の根っこに向かって生えてくるので、乳歯列期から歯列を整えておくことが非常に大切。違った言い方をすれば乳歯の段階からの矯正は、しっかりと物が噛める健全な永久歯列にしていくための土台作りになります。きれいな歯列と噛み合わせは、清掃性が高いためにセルフケアがしやすく、また均等に噛む力がかかるため虫歯や歯周病などのリスクも低くなる。結果として生涯にわたる歯の健康につながっていきます。また乳歯列期に100%の噛み合わせが実現できなかったとしても、永久歯列期になってからの歯列矯正が短期間で負担が少なく済む可能性も高くなります。そういった意味からも、乳歯のうちから取り組むことが重要です。
咬合誘導や矯正を開始するベストなタイミング
”早い段階から口腔内のチェックを行うことが大切”
最初のポイントは乳歯列が完成する2?3歳のタイミングです。この段階で前歯の位置や歯間のスペース、噛み合わせの深さなどに異常がないかをチェックしましょう。この時期にスタートできれば、比較的に負担の少ない方法で済むケースが多いです。もう一つは永久歯に生え替わり出した頃。介入の大きなタイミングはこの2回だと思います。いずれにしても1歳半健診や3歳児健診といった定期健診のタイミング以外にも、歯の生え始め、乳歯の生えそろい、永久歯が生えてきた時などの機会を捉えながら、歯科医院で診てもらうこと。そうすればその時その時に応じた注意点などをお伝えしたり、トラブルを未然に防ぐことにもつなげられるでしょう。
小児矯正で気をつけているポイント
”患者に寄り添い、ベストな治療・メンテナンスを追求”
なるべくお子さんに大きな負担をかけないよう心がけています。例えばブラケットをつけるワイヤー矯正は最終手段。その前にトレーニング、簡単な装置など、負担の少ない方法を提案していくのが、私の小児矯正におけるスタンスです。上下の顎のバランスが崩れているなど、早急にブラケットを使った治療が必要な場合もありますが、そういった特殊な状況を除き、できる限り負担の少ない方法で進めていければと考えています。本格的な矯正治療を行えば負担は大きい。しっかりと噛めて特定の歯に負荷がかからない噛み合わせ、生涯にわたり壊れにくい歯列をつくっていくことを目標に、プラスして負担に配慮した方法を探っていきます。
おかむら歯科クリニックからのメッセージ
”理想的な噛み合わせで豊かな人生をめざしましょう”
子どもたちを虫歯のない健全な永久歯列へと導くことが、私のかかりつけ医としての目標です。乳歯列期から混合歯列期を経て永久歯列完成までが、とても大事な期間となります。つまり幼稚園や保育園の幼少期から小学生を経て中学生までの時期です。この時期に口腔内に現れる異常を早期発見し適切に対応できれば、見た目がきれいで快適でよく噛める状態の獲得が望めます。そうすれば、一生涯ずっと天然歯でおいしく食事を楽しむことができます。どれだけ歯科医療が進歩したとしても、天然歯に勝るものはありません。健全歯列になれば、虫歯や歯周病といったお口の病気にかかるリスクは激減します。理想的な噛み合わせで豊かな人生をめざしましょう。